独立行政法人通則法の改定法案について
                                        2014.4.22
                                       特殊法人労連幹事会

 安倍内閣は4月15日、独立行政法人通則法の一部を改正する法律案を閣議決定した。独立行政法人(独法)職員を組織する労働組合として、改定法案について以下の通り、論点整理する。

1 民主的改革の視点がない改定法案
 制度創設以来10年以上を経過したこと、100以上の法人を一つの法則で縛っていること、法人の「不祥事」等に主務大臣が関与できないこと、等を理由に改定することになり、自民党政権下でH20年法案が国会に上程されるも政局で廃案になり、民主党政権下でH24年法案が上程されるも政局で廃案となり、今回が“三度目の正直”として、先の2つの法案を下敷きに改定法案が提出された。
 しかし、制度見直しを議論した「独法改革に関する有識者懇談会」で提起された、独法事業の民主的発展の試金石となる次の3つの視点を踏まえた改定案とは言えない。
@ 企画立案部門(主務省)と執行部門(独法)が長く分離されると、行政としての責任の所在があいまいになり、執行現場での問題点が政策に反映しにくくなるのではないか。
A 雇用・能力開発機構の「私のしごと館」を例に、「つくれと言った」国に責任はないのか。
B 主務大臣の目標に対して独法が意見が言えるのか。
独立行政法人の名前の通り、法人の自主性・自律性が確保されることで事業の発展が保障されるが、今回の改定案は逆方向を向いている。民営化優先のH20年法案と効率化優先のH24年法案を元にしているからであり、独法事業の発展を目指していないからである。

2 主務大臣の権限の強化について
 ・ 主務大臣が具体的に中期目標を示し、業績評価も行うことで、主務省の権限がいっそう強化され、独法の自主性・自律性が縮小し、これまで以上に主務省が「頭脳」になり、独法は「手足」に過ぎず、現場の声を上げ難くする改定となっていないか。
 ・ 独法が大臣に意見を言えるように、「有識者懇談会」の議論を踏まえ、12月24日の閣議決定は「主務大臣は、目標案又はその変更案を作成する際には、法人と十分に意思疎通を図るものとする」としたが、条文に加えられなかったのはなぜか。
 ・ 主務大臣が中期目標を策定し、業績評価も行うことは、独法事業・組織の入り口から出口まで大臣の責任となり、独法制度創設の根幹である法人の自主性・自律性が阻害されるのではないか。
 ・ 主務大臣(監督官庁)を主役にした上意下達の組織になり、自律性や自分で問題を解決する能力が損なわれるのではないか。
以上のことから、H24年法案で行政法人としていたものを今改定法案では独立行政法人に戻しながら、“名ばかり”独立行政法人にしており、独法制度の理念を形骸化する今法案に特殊法人労連は異議を唱えるものである。

3 評価制度について
 ・ 主務大臣の権限強化と合わせ、評価委員会の権限も強められる事は大きな問題である。
 評価制度委員会は指針を定める際に総務大臣に意見を述べることができ、中期目標の変更に際して主務大臣に意見を述べることができる。また、組織の改廃に対しては、主務大臣に勧告することができる。このように評価委員会の委員に公的事業の改廃の「権限」を与えてしまって、行政の継続性を担保できるのか。
 ・ さらに、評価委員会は、特に必要がある時には総理大臣に対して内閣法第6条(内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基づいて、行政各部を指揮監督する)の規定による措置がとられるよう意見具申できるとしている。委員の任命は内閣総理大臣によることから、内閣の意に沿った人物で構成され、「政治主導」で事業・組織の変更が行われることもありうるだろう。NHKの例を見るように、行政の中立性が担保され評価制度が必要である。
 ・ 独法通則法の規定をもって十把一絡げには出来ないと言いながら、評価の基準や表示を総務省指針で統一することには無理があるのではないか。
 ・ 主務省の評価委員会に代わって主務大臣が評価することとなるが、これまでと具体的にはどのように違うのか。
 ・ 総務省に設置される第三者機関は、これまでの総務省政策評価・独立行政法人評価委員会(政独委)と具体的にはどのように違うのか。
 ・ 第三者機関の委員が10人以内であり、専門・臨時委員を配するとしているが、多業種にわたる独法事業に対応できるのか。
 ・ これまでの2段階評価(主務省の評価委員会と政独委)と新たな2段階評価(主務大臣と第三者機関)と具体的にはどのように違うのか。「評価疲れ」はどれほど解消できるのか。
 以上のことから、これまでの評価方法の総括が十分なされないまま新たな評価制度をつくるとしているが、これまでの2段階評価と変わりはなく、評価結果によっては組織の改廃に直結する、今改定法案に特殊法人労連は疑義を抱くものである。

4 組織・雇用・労働条件について
 ・ 研究開発法人に「国立」を冠することとなった以上、希望する研究所については国立研究所・国家公務員に戻すべきではないか。
 ・ 第三十五条の中期目標終了時の検討では「業務の継続又は組織の必要性」を前提とすべきであり、「業務の廃止もしくは移管又は組織の廃止その他の所要の措置を講ずるものとする」と「廃止ありき」では、第2条「国民の需要に的確に対応した多様で良質なサービスの提供を通じた公共の利益の増進を推進する」ことができないのではないか。
 ・ 第五十条の四−2で「離職を余儀なくされる」ことは「整理解雇」に該当するものであり、主務大臣が入口から出口まで関与する事業の改廃に係る「整理解雇」の場合、国が破綻しない限り独法職員の「整理解雇」はあり得ない旨を、附則に明記すべきではないか。
 ・ 業務の廃止等に伴う再就職あっせんの対象外を管理職以上とすることには無理があるのではないか。業務の廃止等は中間管理職の責任ではなく、法人組織の責任者と言える「役員」とすべきなのではないか。
 ・ 再就職あっせんの対象外に内部の規則違反を含めるのであれば、具体例を示し、労働側代表を含めた議論を行うべきではないか。
 ・ 非公務員型独法職員の給与については労使交渉で決まるものであり、第五十条の十−3は必要ないのではないか。若しくは、現行法の「社会一般の情勢の適合」で良いのではないか。「有識者懇談会」では理化学研究所が退職金もない任期付研究員を増やして、柔軟な給与制度を進めていると評価され、他の独法もそれにならうよう求め、昨年12月の「独立行政法人改革に関する基本方針」(閣議決定)では、「給与適正化」を決めた経緯がある。不安定雇用職員を増やすことを前提として、「職務の特性及び雇用形態その他の事情を考慮」するよう求める条文は削除すべきではないか。
 以上のことから、主務大臣の評価を元にした事業・組織の改廃による「整理解雇」を想定し、民間労働法理が適用される非公務員型独法職員の労働条件を法律事項で縛る、今改定法案に特殊法人労連は反対するものである。

5 特殊法人労連の見解
 上記に法案の問題点を指摘したように、今改定法案は多様な公的サービスに責任を持つ独法の事業及び組織の発展に寄与するものではない。むしろ、これまで以上に主務省と法人の関係は上意下達となり、現場の意見が反映されなくなる恐れがある。
また、職員の雇用・労働条件についても、「整理解雇」が想定される条文(第五十条の四−2)や労使交渉に「介入」する条文(第五十条の十−3)が入り、職員の不安を広げるものとなっている。
 よって、特殊法人労連は独法通則法の一部を改正する法律案の廃案を求め、独法の公共性と職員の雇用を守り、運営費交付金等の拡充に向け奮闘するものである。

以  上

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